自転車のジオメトリ考

 自転車の各部の設計数値であるジオメトリって当然自転車の動きに大きく影響するわけです。いくらカーボンの積層にこだわってもジオメトリが崩壊してたら踏んでも全然進まないし、思いっきり倒しこんでも弩アンダーが出ちゃうわけですよ。まあジオメトリを一部公開していないメーカーもあるんですけどね、フォークオフセット書いてないデローザとかオルベとかキャニオンとか。もっと言うと、ジオメトリ表と実測値とが異なっているクソいい加減なメーカーもあります。で、筆者の1%の経験と99%の妄想をもとに、何が何に影響するのか考えてみます。

⑴BBドロップ
 BBドロップというと、どうでもいいみたいな扱い受けますよね。地面の異物にべダルが引っかからないようにBB上げてるとか言われてます。確かにピストバイクは曲がりながらでもペダルを回す必要があるから引っかからないようにBBドロップが高く設定されているので間違いではないです。

 でも走行性能に影響してないわけはなくって、BBが高くなる(BBドロップが小さくなる)ことにより、バイクに対して体の位置が高くなるのでバイクを倒しこみやすくなるわけです。バイクを倒しこみやすくなることと表裏一体で、直進するときに雑に踏むとフラフラと安定しなくなるわけです。私のシクロクロスなんかBBドロップ58mmでそんな傾向が強いわけですね。
 また、自転車は人がペダルを回すもので、BBはその軸になるわけですので踏み心地にも当然影響が出ますよね。個人的な感想として、BBが高いチャリは低速域での加速性能が良くって、BBが低いチャリが高速域の加速性能に優れるような感覚があります。ラシックスペシャリストであらせられるカンチェラーラモデルのバイクがBBドロップ80㎜とかなのも証左だと思います。これ理論的に説明しようと思うと、地面との高さで考えます。自転車は前後輪の接地点を結んだ線を中心に左右に振られるからには、地面からみた入力点が低い(BBが低い)ほうが安定志向になります。その結果、高速運転時に向くという考え方です。 
 まあ理論はどうあれ、BBドロップの効果は、BBが高い(BBドロップが小さい)と倒しこみやすく、フラフラしやすく、低速域の加速に優れるが高速域でイマイチ速度が伸びない。BBが低い(BBドロップが大きい)と倒しこみにくいが安定し、低速域で重いが高速域で速度が伸びます。もちろん、BBドロップ以外にもはるかにインパクトを大きく影響を及ぼす因子があります。それは次の章で説明します。
⑵フロント周りの設計(ヘッドアングル、フォークオフセット、車輪径)
 こんなブログを読む皆さんはお察しの通り、次はフロント設計です。ヘッドアングル、フォークオフセット、トレール量ってのはステアリング軸の延長線と地面の交点から、フロントタイヤの接地面までの距離です。ハンドルが切れたとき、タイヤに遠心力による横力がかかります。この横力はタイヤの後ろ側に大きくかかり、ハンドルを元に戻そうとする力に一部が変わります。そして、トレール量が大きいほどテコ比でハンドルを元に戻そうとする力は大きくなります。
つまりトレールが大きいほどハンドルが安定志向になるわけですね。某社の資料5ページ目にわかりやすい解説があるので置いておきます↓。
トレールが大きすぎると安定志向の弩アンダーステアになり、トレールが小さすぎるとクイックすぎてつねに集中力を必要とするピーキーなマシンになるわけです。確かにヘッド角72度のロードフレームで、オフセット45㎜から43㎜に変えるとハンドルの安定性が良くなったりします。アンカーによればトレール量は60mm前後が最適といわれています。これはロードフレームに限っては正しいと思います。
 
 しかし、トレール量が小さければ曲がりやすいのかっていうとそうではないと僕は考えているんです。例えばヘッド角71度でオフセット43㎜のフォークと53㎜のフォークがあったとしてどっちが曲がりやすいかっていうとオフセット43mmのほうが意外と曲がりやすいんですね。
 私は、これはフロントの荷重によると考えています。オフセットの拡大でフロントセンターが伸びた分だけでなくハンドルが前輪ハブの手前側になることで、フロントの荷重が抜け、その結果ハンドリングはクイックなのに曲がらない直進安定性の高い自転車になるわけです。(フロントの荷重が少ない副次効果として、オフロードで前輪がはじかれにくく走りやすいというのがあります オフセットが大きいと、段差を踏んだ時のオフセット変化が小さくなることでオフロードで前輪が弾かれにくくなります)   オフセット53㎜のフォークでも、リアを当て効きさせたりハンドルに体重載せたりしてフロント荷重にするとちゃんと曲がってくれます。
 逆に小オフセットだと、フロントに荷重がかかっているのでペダルを踏みながらでも倒しこむとキュっと回ってくれます。
 それだけではありません。倒しこみやすさは先に述べたようにBBハイトによっても異なるので、適切なトレール量はBBハイトによっても変わる(BBハイトが高ければトレールを多めにとっても倒して曲げられる)と考えています。

 ここまでのハンドリング仮説をまとめると、BBドロップ小さいと倒しこみやすいのでトレール量は大きくても曲がれる、トレール量はハンドルの軽さには影響するが、直進安定性はハンドルの重さ(つまりトレール)と前輪荷重で決まり、前輪荷重はフロントセンター(とリアセンター)およびハンドルとフロントハブの位置関係による。さらにフロント荷重が少ないとオフロードで前輪が弾かれにくい、となります。
 追加的な仮説ですが、自転車はペダリングの性質上常に蛇行しています。ホイールベースフロントセンター+リアセンター)が小さければ小さいほど、蛇行の際にフロントタイヤを切る量、さらにはフロントタイヤを切った分の抵抗の総量(これはsin切れ角を時間で積分したもの)は小さくなると考えられます。つまり、蛇行が大きくなるクライミング用には、ホイールベースが小さい自転車のほうがロスが減りきびきび登れるという仮説になります。
往年のヒルクライムフレームの設計でヘッド角73度オフセット43mmくらいのものが多かったこととも整合的だと思うのですがどうでしょう。
⑶リアセンター
 これで最後です。リアセンターですが、リアセンターを伸ばすことの効果は急勾配で後ろにひっくり返りにくくなること、平地でのフロント荷重の増加、ホイールベースの増加、ホイールベースの増加からくるコーナリングのダルさ、逆にホイールベース増加による安定性の増加、泥つまりのにくさ、リアバックのしなやかさです。
 私はリアセンターはつめられるだけ詰めたものが好きです。サドルの下にアクションカムを下向きにつけてダンシングしたことありますか?やってみるとわかりますがチェーンステーってけっこうグワングワン撓んでます。チェーンステーが撓むと意図せずにリアタイヤが勝手に操舵されてロスに繋がります。

 リアセンターはつめれば詰めるほうが(泥つまりのない限り、上下方向のしなやかさは整形や積層でカバーしてもらって)いいと私は考えていますが、ある程度のリアセンターがあったほうがオフロードの登りで安定して回しやすいという意見も聞きます。まあリアセンターにはそういった特性があることを理解していただければ結構です。

まとめ
 最後にまとめると、リアセンターは使用環境によって剛性を優先するか安定性・乗り心地を優先するか決める。BBドロップは速度域または倒しやすさ(利用目的)で設定する。利用目的のハンドリングを達成するために(BBドロップに見合った)トレール量、およびフロント荷重をヘッド角とオフセットで設定する。こんな認識ででいろんな設計のグラベルロードを試乗してみると、だいたい想像とフィーリングが一致する印象です。ではまた。

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